STORY

失業中の本屋の元店主と、サエない花屋のバイト男が、ジゴロを開業?!ニューヨークの街にしあわせをばらまく、小粋で笑えて、心温まるラブストーリー。

「希少な本を買う人が、今では希少になった」と、自分の商才の無さを棚に上げ、友人のフィオラヴァンテ(ジョン・タトゥーロ)にボヤくマレー(ウディ・アレン)。ニューヨークはブルックリンで、祖父が始め、父が引き継いだ本屋を、彼の代でたたむことになったのだ。
妻が働いているとはいえ、4人の子どもを抱えて失業したマレーは、偶然舞い込んだ儲け話に飛びつく。かかりつけの皮膚科の女医パーカー(シャロン・ストーン)から「私とレズビアンのパートナーとのプレイに男を入れたいの」と相談されたマレーは、「一人いるけど、1000ドルかかるよ」と持ちかけたのだ。
マレーの頭に浮かんだのは、定職にも就かず、家賃も払えず、数日前から花屋でバイトを始めた友人フィオラヴァンテだった。イケメンとは程遠いことを十分自覚しているフィオラヴァンテは、最初はマレーの話に頭がおかしくなったのかと呆れる。しかし、「君はモテた。セクシーだ」などとおだてられるうちに、すっかりマレーのペースに乗せられ、気付いた時には取り分は6対4なんてことまで決めていた。
「まずは、お試しさせて。私と彼の二人で」と注文するパーカーと商談成立、モダンアートで飾られたハイセンスなパーカーの高級マンションで、フィオラヴァンテはジゴロデビューを果たす。フィオラヴァンテが持ち帰った封筒には、500ドルの“チップ”も入っていた。
フィオラヴァンテの稼ぎっぷりにすっかり味をしめたマレーはポン引きの才を発揮、軽快なフットワークと絶妙な営業トークで客層を広げていく。商売は大繁盛、どうやら女性の気持ちを理解できるという、フィオラヴァンテの“隠れた才能”が、彼女たちを惹きつけるらしい。
すべての女性を敬愛するがゆえに、ふと罪悪感に囚われるフィオラヴァンテ。そんな時もマレーに、これは女性の自尊心を持ち上げる“善行”だと諭され、またまた気が付けば、「ヴァージル&ボンゴ」という、自分たちの新しいコンビ名まで決めていた。
そんな一方でマレーは、ある女性に熱心なセールスを繰り広げていた。マレーのような不マジメなユダヤ教徒ではなく、厳格な宗派の高名なラビの未亡人アヴィガル(ヴァネッサ・パラディ)だ。まだ若く美しい彼女が、夫の死後ずっと喪に服している姿を見たマレーは、「人は触れ合いが必要だ」と説得し、フィオラヴァンテの“セラピー”を受けることを承諾させる。
フィオラヴァンテのアパートで、優しく背中をマッサージされたアヴィガルは、ハラハラと涙を流す。「ずっと誰も私の体に触っていないから……」という彼女の涙のワケに、心を揺さぶられるフィオラヴァンテ。2人は普通の恋人同士のようにデートを重ね始める。
2人の恋は、ジゴロにとっては“ご法度”、ユダヤ教徒にとっては“禁忌”だった。ある日、アヴィガルに想いを寄せる幼馴染のドヴィ(リーヴ・シュレイバー)の告発で、マレーは無理やりユダヤ法の審議会にかけられてしまう。ポン引きの罪は“石打ちの刑”だという、まるで中世の裁判だ。ちょうどその頃、フィオラヴァンテも自らの恋のせいで、ある窮地に陥っていた-。
果たして、2人の恋の行方は? そして、マレーの運命や如何に。